従業員が企業家の資質を持つことと、従業員へ企業文化を承継することが重要です。
創業社長が一代で築いたり、代々親族で承継してきた事業を、初めて従業員に承継する場合など、従業員には、企業家(アントレプレナー)としての意識と資質が求められます。
一般的な事業承継マニュアル等は「株式や事業用資産を買い取るための従業員の資力や、社長の債務に対する個人保証や担保の引き継ぎが問題となります」といった記述が多いですが、従業員にはまず、今の会社を承継しない場合は、同業種で起業するくらいの心構えを持つことや、自己資金や借り入れ金の調達を行える(一人で全額行うかどうかは別として)計画性が必要だと言えます。
これらはいずれも、企業家(アントレプレナー)として必要な資質であり、意識して身に付けることもできますが、個人差が大きいので、事前の見極めが重要です。
また、従業員が後継者候補として中途採用されて、会社の在籍期間数が比較的短い場合など、従業員には、企業文化を理解し承継する意思と能力が求められます。
今の会社は事業を続けていく上で、組織として身に付けた、事業に対する価値観や、業務の進め方(プロセス)があります。 例えば、挨拶や整理・整頓の徹底あったり、コストダウンや節約の意識、あるいはお客様に付加価値を提案したり、資金繰り(キャッシュフロー)を確保したりする仕組み(仕事の進め方)だったりします。 これらは全て、企業文化を構成する要素になります。
後継者(候補)は、どうしても「自分ならこうする」と、現状を否定的に捉えて、現状を変革する方へ意識が向かう傾向があります。 まず、今の企業文化を理解して、それを承継する意識が求められます。
もっとも、企業文化の承継には、従業員(後継者)の努力だけでなく、社長の協力が不可欠です。 企業が事業を継続できる理由(企業の存在価値)を、経営のあらゆる側面から後継者に伝えられるようにしましょう。