2011年5月アーカイブ

質問
うちの会社の社長(後継者)になりたい人なんて、見つからないのでは?
答え
社長業の魅力を、社内外に伝えましょう。

誰も後継者になりたがらない、と言われる会社の中には、現経営者がいつもすごく大変そうにしていて、社長業の魅力が親族や従業員に全く伝わってなさそうなところが見受けられます。

社長業は確かに責任も重く、日々多くの課題をクリアする必要に迫られる、なかなか気の休まらない立場です。でも、社長ならではの醍醐味もあります。 これらを生き生きと、社長の言葉で語ることで、社長業の魅力が社内外に伝わります。

会社の経営資産(ヒト・モノ・カネ・情報)を、どう活用して何をするか、最終的かつ最も大きな権限が与えられていること。 ~ 例えば、一般的な日本企業(大企業)のサラリーマンであれば、人材採用の最終権限を持つことは、滅多にありません。 ましてや「我が社のこの事業には、こんな人材が求められている」といった具体的な事業展開のイメージをもって、そこに適した人材を採用・配属して、その人材と日々一緒に働きながら、事業を育てられることは、中小企業の経営者ならではの魅力でしょう。

さらに、その権限を生かして「あれをしよう」「こうやって進めよう」と、会社の進む方向(戦略)を決められること。 ~ 言うまでもないことですが、誰からも指示を受けずに自らの業務を決定し、それを組織として遂行できるのは、特殊な例を除けば、組織のリーダー以外にありえません。

また、他の会社の社長さんをはじめ、社長でなければ築けないネットワーク、語り合えない思いがあること。 ~ 「代表取締役 社長」の肩書を持つと、望むと望まざるとに関わらず、その言動が重みを持ちます。 山の頂上に上った人にしか見えない景色があるように、社長さんでなければ経験できない場が、社会には数多く存在します。

社長業の魅力を、社長さん自らの言葉で語ることは、潜在的な後継者の裾野を広げることにつながります。 是非、実践してください。 img03.gif
質問
うちの従業員(後継者候補)は皆、半人前で、社長(後継者)はとても務まりそうにないが?
答え
まずは現経営者が、他者のアドバイスに耳を傾けましょう。

現在、事業承継が課題となっている社長さんの多くは、市場が大きく成長する時代に頭角を現した方々です。 旺盛な市場の需要を満たすため、意思決定を独りで素早く行うだけでなく、必要な業務は何でも自分でこなしてきた、いわゆるワンマンタイプです。このような社長さんは、確かに事業を今の姿に育てた立役者です。

その一方、事業継続の視点で見ると、このような社長さんは、後継者を育成しづらい環境もつくっています。日頃から、部下(従業員)に仕事を任せ・一人前に育てる風土がなければ、社内が「半人前」ばかりなのは、当たり前だといえます。(場合によっては、自分に異議を唱える従業員を冷遇するような、事業継続に背を向けているような社長さんも見受けられます)

後継者が一人前に育つ風土・社内環境は、社長さんがつくらない限り実現しません。 何でも自分でこなさずに、仕事を任せること。 任せたからには、よほどのことでなければ、自分の意に沿わなくても見守ること。 長年、意のままに経営してきた社長さんには、大変な難題です。

まずは、今までの姿勢を変えて、第三者のアドバイスに積極的に耳を傾けることから始めることをお勧めします。社長さんの意に沿わない意見が出てくれば、それは従業員が自立しつつある、ということです。 img04.gif

質問

社外から後継者候補を選ぶためには、まず何をすれば良い?

答え

採用・育成・開示の実績を残しながら準備を進めましょう。


中小企業が社外から後継者候補を選ぶことには、様々な困難が伴います。 まず、以下の3点について事前に経験を積みながら、候補者の選定を進めましょう。 後継ぎ採用へ前のめりになる前に、会社の受け入れ態勢を整えることが重要です。

  1. 中途採用の実績
  2.  社外から加わった後継者候補が十分な働きをするためには、採用や配置、教育訓練、評価などの制度はもちろん、社外の人間(部外者)を、自社組織の一員として迎え入れる社風が整っている必要があります。 中小企業の多くは中途採用そのものに苦労しています。 中途採用をうまく進められない企業が、後継者を社外から招くことは現実的ではないでしょう。


  3. 管理職・経営層育成の実績
  4.  ここでのポイントは、一般的・普遍的な管理・経営スキルを社員(管理職候補など)が身に着けると同時に、自分の会社を客観的に見ることで、経営者自身も気が付いていない、自分の会社を管理・経営するために押さえるべきツボを、明らかにすることです。 また、完璧な後継ぎ候補を見つけることは困難ですから、最低限、このツボを押さえられることが、後継者選びの基準になります。 


  5. 権限移譲・経営内容開示の実績
  6.  会社の仕組みがブラックボックスのまま、社外から迎え入れた後継者と、阿吽の呼吸で経営することはできません。 自社の経営がどうなっていて、そのうちどの部分を誰に任せるか、意識的に決めてルール化するようにしましょう。 少しずつ権限移譲する習慣は、事業承継をスムーズに進めるのに役立ちます。 


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質問
後継者に必要な資質とは?
答え
ステークホルダー(社内外の利害関係者)から認められることが、最も重要です。

後継者が備えるべき資質は多岐に渡ります。  最も重要なのはその資質が、親族や株主、金融機関、取引先、そして何より従業員から「この人なら社長として大丈夫」と理解され、支持を得られることです。 
  • 他の相続人や親族などに、配慮・気配りができる
  • 会社の現状や今後の方針について、金融機関や取引先の納得・合意が得られる
  • 会社の状況を理解して、従業員から指示・共感を得られる
例えば、後継者は株式を集中的に相続するなど、「優遇されている」と他の相続人から思われる場合があります。 または、創業時の事業から撤退するなど、経営者として下す意思決定が、親族の総意と異なる場合があります。 このような状況において、周囲の理解を得るためには、タイミングよく丁寧なコミュニケーションを取れる人物であることが重要になります。 

また、金融機関や取引先、従業員などのステークホルダーは「この人が社長で、この会社は大丈夫か?」という視点で後継者の資質を判断します。 その場合、これらのステークホルダーは、後継者の個別の知識やスキルの有無を見ているというよりは、「ヒトの上に立つ人物としてふさわしいか」「様々な状況の変化が訪れても、会社を存続させられる人物か」といった観点で、後継者を判断する場合が多いでしょう。 

  • 志の高さ、誠実さ、リーダーシップ、社会的責任感など、人の上に立つ者として求められるもの
  • 熱意、粘り強さ、好奇心、向上心、プラス思考など、企業を長期継続させるために必要なもの
もちろん、後継者には経営に関する個別の知識やスキルも必要です。 ただし、例え知識やスキルが十分であっても、後継者がステークホルダーから認められない限り、企業を存続させることはできないことに留意する必要があります。 見方を変えると、後継者には、今後数十年に渡って、これらのステークホルダーから信頼され続けられる、という資質も必要です。 img05.gif
質問
経営者として獲得すべきスキル・知識は?
答え
大きく三つの領域が必要です。 もちろん、理想像を追い求めないことも重要です。

現経営者や同業者がおそらくそうだったように、スキルや知識を体系的に獲得する必要はない、という考えで事業承継を進めることは大変、危険です。

政治・経済・社会環境の大きな変化、技術の進歩、さらに、以前のように成長が保証されていない市場において、日々、優秀・強力な競合が現れる状況を考えると、今までと同じやり方では、企業の存続は難しいでしょう。

さて、後継者が獲得すべきスキル・知識は、大きく三つの領域に分かれます。
  1. 基礎スキル~ビジネスパースンとして企業運営に関わる知識をバランス良く分かっていること(「経理・財務」「採用・人事」「契約・法務」「マーケティング」「情報リテラシ」など)
  2. 自社知識~意思決定や執行に関わる、社内外の状況を、分かっていること(「自社の経営資源」「自社のオペレーション」など)
  3. 経営者に求められる資質や、遂行すべき業務を分かっていること(「マインドセット」「経営戦略・事業計画」「リスク感覚」「人間関係の構築と維持」など)
上記の順番で獲得していくことが望ましいですが、全ての能力を備えた、理想の後継者はいないので、後継者(候補)の知らないこと・できないことが気になって、いわば減点法で後継者(候補)を評価してしまわないよう、注意してください。 img06.gif

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